ザクセンの蛍石

 

 ザクセン州は旧東ドイツ側で、ドイツの東端に位置しチェコやポーランドと接しており、ザクセンという名前は世界史が好きな人にはなじみ深い名前なのでしょう。

ザクセン州(saxony)の蛍石はドイツの中でも黒い森のものと共に双璧を成します。その色合いは、黄色や、褐色、琥珀色、はたまた濃紫色のもの等が多い気がします。産地についてはただ単にSaxnoyやFrohnauとだけラベルされたものも多く、コレクターとしては”これは一体どの鉱山のものなのだ?”と思うことが多々あります。しかし、鉱山がこの一体に集中しているので仕方がない事かもしれませんね。

詳しく見ていくとSaxonyの鉱山だけでもキリがないのですが、その中ではBeihilfe鉱山やDörfel Quarryのものが個人的には好みです。



Beihilfe Mine

Beihilfe Mine, Halsbrücke, Freiberg District, Erzgebirge, Saxony, Germany

8cm×6cm×3cm  Largest = 12mm

Ex: Jesse Fisher Collection


ドイツの有名な産地の一つ・Beihilfe鉱山の蛍石&水晶。

レモンイエローのとても綺麗な蛍石が水晶の上に幾つものっています。

透明度はたしかに完全な透明ではなくトランスルーセントぐらいなのですが、このビビッドな黄色と白い系の母岩とのコントラストが目を引きます。


この標本は面白い経歴もある標本で、元々はロジャリー鉱山で著名なJesse Fisher氏のコレクションで、その次に日本のとある鉱物商の手に渡り、そしてオランダのコレクター兼ディーラのLeon Hupperichs氏のコレクションとなっていた標本です。


このBeihilfe鉱山は青い蛍石や黄色い蛍石、そして緑鉛鉱で有名な鉱山です。しかし、閉山してから長いのか市場にはそれほど出回りません。もっと出てくれれば言うことがないのだが…




Shaft 78

Shaft 78 (Nowaja Shaft), Schottenberg, Frohnau, Annaberg-Buchholz, Annaberg, Erzgebirge, Saxony, Germany

32mm×30mm×13mm


Shaft 78, ドイツ語ではSchacht 78、訳するならば78番縦坑。


フランス・Puy-St-Gulmierに近い鮮やかなブルー、1cmに満たない小さい結晶の集まり。この青色は毒々しさを感じるソーダブルー、あるいは切子グラスの青に近いのでしょうか。なんとも形容しかねます。

しかし、ここ特有の美しさに心を奪われた経験をお持ちの蛍石コレクターはきっと多いはずです。


この標本も非常にShaft78らしい見た目で、5mm程度の結晶が集まったものです。ルーペで観察してみると実は中心部は淡いイエローグリーン。エッジの部分にある鮮やかな複数の青ゾーンと重なって、Shaft78独特のカラーになるようです。


もとはFohanauを中心にあつめているドイツ在住コレクター由来のオールドコレクションなのですが、そのラベルには ”Mehrfarbig" zoneと言及されていました。無理に日本語にすれば "彩なす青" になるでしょうか。


ちなみにネット上のデータベースを参照する限りでは、1947年から1956年まで稼働していたウラン鉱山のようで、Nowaja Shaftとも言うようです。



Frohnau

Frohnau, Annaberg-Buchholz, Annaberg District, Erzgebirge, Saxony, Germany

25mm×20mm×20mm

 

ドイツ・有名産地の蛍石。

ミュンヘンショーでの放出品を13年池袋ショーにて入手したもの。

濃い琥珀色を主体に、これまた濃い紫色のファントムを伴ういかにもドイツという感じの蛍石です。

写真上部に見えるように欠けもあったりと完璧なものではないですが。色合いがドイツらしい感じ。

 

久しぶりに取り出してきてじっくり見てみたら、照明をあてたところ実は濃い青もでるトリカラーでした。(2枚目、3枚目)

以前に購入した標本でも、新しい発見があるとお得な気分に浸れますね。

 

このFrohnauの辺りは古くから多くの鉱山が存在しており、様々な蛍石や鉱物を産出していますが、特に黄色いものや、ほぼ黒色にみえる濃紫色の蛍石、鉄分を含むことで一部赤く見える蛍石など蛍石も色々あります。

 

追記:

Bergmännisch Glück Flacher Vein、この標本もたぶんここのもの。産する蛍石のカラーバリエーションに富んでいるようだ。

 

Bergmännisch Glück Flacher Vein, Frohnau, Annaberg-Buchholz, Erzgebirge, Saxony, Germany

60mmx37mmx24mm

Mined c. 2005

 

Saxonyといえば黄色い蛍石や、青色、緑色などが有名ですが、これはマルチカラーの蛍石。

この光を当てた際のレインボーのような色合いはBergmännisch Glück Flacher Veinで2005年ごろに産出したものに特徴的で、これも十中八九そこからの産出なのでしょう。数か所で2009年新産であるとも見かけました。

 

表面が赤鉄鉱?に覆われていますが、光にかざすと緑を中心とした、青や紫、黄色のグラーデーションが確認できて幻想的。

写真以上に綺麗なものなので、ぜひ実物を探して見てほしいところ。

また、骸晶もよく発達しています。

 

Bergmännisch Glück Flacher VeinはBergmännisch Glück Mineの一部で1837年に閉山していますが、この一帯が二次大戦後にウラン鉱山として稼働した際に、運搬・換気用として利用されていたようです。

 



Zinnwald

Zinnwald, Erzgebirge, Saxony, Germany

(Cínovec,Krusné Hory Mts, Bohemia, Czech Republic)

62mm×55mm×20mm


ドイツとチェコとの国境にまたがる古典的有名鉱山の蛍石と黄銅鉱。

ドイツ側はツィンバルド(錫の森との意味)、チェコ側はシノベッツと読み錫やタングステンを採掘していたり、チンワルド雲母が有名な産地でもあります。


この標本はドイツらしく濃い紫色をした蛍石ですが、とても精緻なステップとなっていていわゆるアステカピラミッド。ただ濃い紫とはいっても黒いというほどでもなく…、後ろから光をあてると綺麗な紫が確認できます。

私の手に渡ったときには以前の持ち主のラベルが3枚付属していて、所々に欠けがあるのは時の流れを考えると仕方ないのかな?なんて思います。

今回はそれらのラベルが、すべてドイツ側の表記であったのでそれに倣いドイツ側の産出としています。



Sauberg Mine

Sauberg Mine, Ehrenfriedersdorf, Erzgebirge, Saxony, Germany

42mm×24mm×20mm

 

黄色を基調として、少しメタリックで緑や桃色が混ざったちょっと複雑な色合いの蛍石。

入手時の画像では桃色に近いような色がメインにみえ実物は少しイメージが違いましたが、これはこれで。 白いバライトに側面を覆われ、見る角度によって表情が違います。さらにその上にのるのは黄鉄鉱と、紫色の粒はフルオロアパタイトでしょうか?

この鉱山の蛍石で市場で見かけるものは紫色から黄色がメインですので、これもその幅内といってもよいでしょう。

 

Sauberg鉱山は1990年まで操業していたスズ鉱山で、ドイツの古典的産地として有名なところ。

フルオロアパタイトのType Localityでもあり、現在もTourist Mine(観光鉱山でしょうか)として存在しているようです。

この標本もサムネイル・ボックスに古びたラベルが張り付けられていましたが、残念ながらいつ頃産出の物かははっきりしません。

Ehrenfriedersdorf Fluorite

Ehrenfriedersdorf, Erzgebirge, Saxony, Germany

44mm×38mm×29mm Largest = 11mm

Attr; Sauberg Mine

 

ドイツの暗紫色の蛍石と煙水晶。

かなり濃い紫色のため、殆ど黒色一歩手前のような色合いをした蛍石のまわりを、これまた少し灰色に色づいた煙水晶が覆っています。

全体として暗い印象をうける標本ですが、こういうのもたまには面白いものです。

 

ちなみに、このEhrenfriedersdorfとラベルされている標本の多くはSauberg Mineかその周辺で採れたものらしいです。

しかしながらこの標本の色合いからすると同産地かどうかは自信が持てないところ。

(後にこういった色合いのものもあるのを写真で確認しました。)