カナダの蛍石

  MadocやHighway7 Roadcutに、Hiway17 Roadcut、Flamboro Quarryなどのオンタリオ州のものが最もメジャーですが、他にもブリティッシュコロンビア州のRock Candy鉱山やケベック州などの標本も流通しています。


Flamboro Quarry

Flamboro Quarry ("Flamborough Quarry"), West Flamborough Township, Wentworth Co., Ontario, Canada

Miniature Sized

Mined c. 2011-2014

 

Flamboro Quarryの茶色いミニチュア標本。

外側はほぼ無色から若干淡い空色、中心部に向かうほどキャラメル色の配色。

オレンジ色の閃亜鉛鉱の粒が良いアクセントとなっています。 なにより結晶のGemmyさと照りが良いです。

 

アメリカ大陸で茶色い蛍石と言えば、最もポピュラーなものはアメリカ・オハイオ州はClay Centerの蛍石(例えばコレ)。
このFlamboro Quarryを含めた、オンタリオ湖のほとりWentworth Co.の蛍石は、Clay Centerの蛍石と似た見た目をしています。 加えて、蛍光も似たような乳白色の蛍光です。

(そのタイプの蛍石はミシガン州などでもでるわけですが。)

 

あえて区別するならば、Flamboro Quarryのものはオハイオ州のものとは違い天青石ではなく閃亜鉛鉱と共生していることが多いことがあるかもしれません。

ただし、これもオハイオの別産地では茶色や紫の蛍石に閃亜鉛鉱が共生することもあり、簡単にこれはオハイオ州、これはミシガン州、オンタリオ州と区別するのは難しいのではないでしょうか。

(2017/7/28 編)

Flamboro Quarry , West Flamborough Township, Wentworth Co., Ontario, Canada

Miniature Sized

Collected in April/25 2008

Ex. John Elliott collection

 

閃亜鉛鉱との共生が特徴的な標本。

過去に掲載した標本ほど濃いキャラメル色ではなく、黄色と茶色の中間のような色合い。

透明な部分もあれば、白く靄が入ったところもあり、かえって閃亜鉛鉱との対比が良い落差を醸しだしているのではないでしょうか。右には閃亜鉛鉱がついていて、左にはついていない。この非対称な感じも良い眺めだと思います。

今からほんの10年ほど前に採集された標本ですが、それでも日本に入ってくるまでの過程で、いつ採取されたかという情報は抜け落ちがちです。そういった意味でも悪くはないサンプル足り得るでしょう。

(2019/7/26)



Lafarge (Dundas) Quarry

Dundas Quarry ( Lafarge Quarry), West Flamborough Township, Wentworth Co., Ontario, Canada

30mm×20mm×17mm                  Largest = 10mm

第36回名古屋ミネラルショーにて購入


カナダのある程度有名な産地、Dundas Quarryの蛍石。

色は琥珀色と無色が入り混じって感じで、このオンタリオ州で採れる蛍石らしい色合い(パッと見有名なオハイオ州の蛍石に似ている)をしています。

形もしっかりとしていて、勿論白く蛍光します。

小さいながらしっかり纏まっていて、いいサムネイルなんじゃないだろうか。


この産地は所有者の入れ替わりが何度もあったため、古くはDundas quarryやSteetly quarryとして知られていましたが、最近はLafarge quarryと呼ぶらしくこの標本もLafarge quarryのラベルで購入したので比較的最近の産出のものかもしれない。

位置的には上にあるFlamboro quarryと目と鼻の先で、オンタリオ湖のほとりにあります。

最大で10cmのこの色合いの蛍石が産出しているらしいが、大抵は数センチサイズに納まり、色合いはこの手の薄い琥珀色~黄色のような色合いで白く蛍光します。


Montrose Rock Dump

Montrose Rock Dump, Niagara Falls, Ontario, Canada

Small Cabinet Sized

Ex. Dr. Steve Chamberlain collection #7817

Collected by Harry Maines in 1984

 

蛍石コレクターにとっては比較的有名なナイアガラの滝近傍から産出する青紫の蛍石。

これはその近辺で水力発電所の建設が行われていた1984年に採集された標本で、狭いポケットの中に3㎝を超える不完全な結晶と、15mm程度のほぼ完全な結晶が向かい合ったもの。

黄色く濁った方解石がちょっとしたアクセント。

 

ナイアガラの滝を挟んでアメリカ・New York州に接しているわけで、多少はなれたWalworth QuarryやPenfield Quarryと似た照りと透明感のある結晶が美しい…。そのあたり同様20mmを超える結晶は基本的に稀で、これは結構大粒。Aestheticかと言われると、正直…ですけど、確実にGood representative.  Harry Maines氏とRod Tyson氏、Cory Suter氏が1983年夏に採集した有名な標本も知られてますね。

(2018/8/11)

 



Madwaska(Faraday) Mine

Madawaska Mine (Faraday Mine), Bancroft, Ontario, Canada

Thumbnail Sized

Ex. Frank Melanson Collection,  Collected in 1950's?

 

オンタリオ州にあるウラン鉱山から採れた八面体式の蛍石。

1㎝程度と小粒で白く靄がかかった部分もありますが、深緑の色合いが印象的な標本。ロジャリーの緑や、南アのメロンソーダ色とはまた違った綺麗な緑。。

 

Faraday Uranium鉱山は1954年~64年にかけてFaraday鉱山として稼働し、一度閉山したあと75年にMadawaska鉱山として再開し82年に閉山しています。資料をあたると1965年前後に5~7mm程度で深緑色の蛍石がとれたと記載されています。ということで下の標本と比較していただくと、この標本はFaradayのわりに大きめの結晶であることがよくわかると思います。

 

Melanson氏のラベルによると50年代のものようで。

Madawaska Mine (Faraday Mine), Bancroft, Ontario, Canada

Thumbnail Sized

Ex. Jerry Kiefer Collection

 

ひとつ上に載せたMelanson氏の標本に比べると、大体4~5mmぐらいと結晶はこっちのほうが明らかに小さい。特筆すべきはその非常に鮮やかな緑色。この緑色の鮮やかさで、Faraday鉱山は蛍石コレクターの中では有名なわけでして、スウェーデンのMalmbergetと双璧をなすわけです。前のコレクターが遊び心でFluorite var. Emeraldと書いていたのですが、間違ってるけど間違ってない(笑)

 

ついでに言うとこの標本は褐色の赤鉄鉱とのコントラストも個人的には好きなポイント。

 (2018/10/5)



Silver Islet Mine

Silver Islet mine, Silver Islet, Sibley Township, Thunder Bay District, Ontario, Canada

Small Cabinet Sized

Ex. Jonathan Zvonko Collection

 

この産地の蛍石との出会いは2014年・東京ミネラルショー。

石友の一人が、今まで見たことのないカナダ産の蛍石と紫水晶の標本を入手していたのです。話を聞いてみるとオンタリオ州・Silver Isletのものだという。調べてみるとスペリオール湖に浮かぶ小島のようで、1868年に銀が発見されてから1884年にCloseしてしまうまでの16年間に$325万ドル相当の銀を産出した、カナダの伝説的銀鉱山の様子。まさしく”銀の小島”。

これは入手するしかないということで石友の入手先であるカナダの鉱物商にメールし、頼んで持ってきてもらった3個のみの標本のうち1個。

 

ぬらっとした紫水晶の側面を緑色の蛍石が取り囲んだ標本。蛍石は最大で5~6mm程度、緑色の内部は赤茶色となっている様子、何やら金色の鉱物も付着しています。ずば抜けて綺麗な標本ではありませんが、カナダの蛍石としては綺麗な標本の範疇に入ると思いますし、何より産地のレアさで十二分においしいです。

 

しかし150年近くも前に閉山して現在はアクセスできない鉱山であって、銀標本の値段はべらぼうなこの産地。本当にその当時に産出した標本か気になるのは当然で、カナダ人ディーラーにいくつか尋ねてみました。 その彼曰く、「2年前に友人が別の鉱物商のオールドストックから1flat分みつけて、そこから4個だけ入手できた。君からメールをもらってまだ在庫はないかと友人に訪ねたが、枯渇している。年代はわからない。」とのことでした。仕方がないのでいくらか調べてみると、1919年と1970年代に鉱山再開発の試みがあったとのことで、その1970年代の時にでてきたものと考えると自然かもしれません。


Whiteman Creek

the Isometric Claim, Whiteman Creek, Vernon, British Columbia, Canada

Collected in 2017/4/3-5

Miniature Sized

 

カナダの現地コレクターが17年春に採集してきた蛍石。

現時点ではOne time findな代物で、今後さらに出てくるかは謎。今回はコレクターが掘り出してすぐに飛びついたため入手できたが、泥にまみれておりクリーニングする難しさを感じたのであった。

 

結晶の形は中国・Shangbao鉱山に似たステップによる丸めになっており、色合いはここのところよく見る灰青色のパキスタンと似ている。光源により灰青色→すこし紫とカラーシフトをするあたりもパキスタン同様だ。ファントムが入っており楽しく、八面体蛍石→蛍石仮晶のめのう→立方体がステップした蛍石と成長している様は見ていて飽きない。

カナダの広大な大地には沢山の鉱物が手つかずで眠っているであろうから、今後も現地の採集家の頑張りに期待したい。そして私に綺麗な蛍石を…

 


Highway#5

Highway#5(Autoroute 5) Road Cut, near Old Chelsea, Quebec, Canada

25mm×15mm×16mm

Ex. Paul and Dawn Dunning Collection

Mined in 1974

 

ガティーノ川に沿って走るRoute105の近辺でHighway#5を建設していた1974年に約100×50×30cmの大きさのワンポケットからのみ産出したレア物。

表面はエッチングのせいかザラザラ。完璧な結晶とは程遠いですがパステルなミントグリーンがとても心地よい。結晶の角には紫色の部分があり、これも非常に特徴的。

 

発見当時はカナダ国立博物館やコレクターによってすぐ採取されつくされ、以後同様のものは見つからずに40年以上が経過し・・・

20個の良質な標本と100個前後の破片のみ回収できたとのことで、これはその破片の1つなのでしょう。中には青緑の八面体の上にヘキサオクタヘドロンが成長するものが存在しており、それがまた素晴らしい。シリアスな蛍石コレクターなら垂涎の産地間違いなしだと思うんです。

( Ref. J.D.Grice 1981 MR12Vol.2 p103-104 )

 

ちなみに、広大なケベック州ですが、この産地はオタワ川を挟んですぐ向かい側にオンタリオ州という位置。

(2017/7/6 編集)

Highway#5(Autoroute 5) Road Cut, near Old Chelsea, Quebec, Canada

Thumbnail Sized

Mined in 1974

 

前述の通り、高速道路建設中にでたレア物でコレクターに根強い人気のあるHighway#5の蛍石。それの八面体のトップにヘキサオクタヘドロンが成長するとどういう風なの?というサンプルがこれです。

ミントグリーンでザラザラの八面体式結晶の残骸に、やや淡い黄緑色で透明度の良いヘキサオクタヘドロンが成長しています。そして紫のファントムもあり、これが紫の瞳に見えるんですな。猫目。とても印象的で特徴的、一度見たら忘れませんよね。

惜しまれるポイントは八面体が完璧とは程遠いこと。今まで私の知りうる範囲で最高なものは八面体の3/4が残っていて、そのうちに2個の角にヘキサオクタヘドロンが出てきているというもの。はえ~。

というわけで、ちょっと数奇な運命をたどって私の手元に来てくれた標本でした。某御仁に感謝と、ブログをやっていてよかったというところでしょうか。

 

(2018/4/8)


Godbout

Godbout, Côte-Nord, Québec, Canada

Thumbnail Sized

 

珍しい蛍石。どれくらい珍しいかというと、私自身存在を知らなかったですし、何人かのカナダ人ディーラに連絡をとってみて、反応があったのが一人のみという。それで得られた情報は、菱型の方解石と共生するということと、あくまで少量の産出だったということ。たぶん10mmを超えるような結晶は殆どでてないようでした。これ22mもありますけど、本当なんだろうか…

まぁでもそれはそうとして。少し黄色を含んでいても澄んだ緑色の透明度の良い結晶が、寄せ木細工のように八面体のが段々となる姿はユニークに感じます。あんまり他ではないかもと。今回はそのフィーリングが先、情報が後、という珍しいパターンでした。

 

(2019/12/13)


Casaubon Quarry

Casaubon Quarry, Sainte-Ursule, Maskinongé RCM, Mauricie, Québec, Canada

3.5㎝ tall

 

爽やかなミントグリーンが目を惹く蛍石標本。

共生する方解石との様子からはスペインのBerta Quarryや、2015年から2016年頃に話題となった神岡鉱山栃洞坑の蛍石を思わせるものがあります。これは1990年代末から2000年代前半にカナダ、ケベック州でとられたもの。前の持ち主は1990年代末のものとのことでした。

ケベック州の蛍石標本の中でも、最も入手しやすいドーソン石と共生する細かな紫色の蛍石を除くといずれも非常に入手困難なもの。このCasaubon Quarryに関しても随分と昔にHighway #5の蛍石を調べるなかで存在を知りましたが、全く市場にでまることはなく、今回ようやく入手がかないました。

めっちゃかわいくないですか?私、箱を開けた瞬間小躍りしましたからね。

(2023/6/2)


Mount Pleasant Mine

Mount Pleasant Mine, Saint George Parish, Charlotte Co., New Brunswick, Canada

Thumbnail Sized

Ex. Wendy&Frank Melanson collection.

Prev. National Muesum Canada

 

はっきり言って非常にレアな蛍石。

一説によるとこの地からはカナダで最も綺麗な青い蛍石がでたとされ、開発途中であった1960年代には8cmに及ぶ青くてちゃんと綺麗な結晶を産したのだとか。ただしその後は青い蛍石は姿を現さず、それでも1980年代に再開発された後、青緑色の綺麗な八面体を産したとか、そういう話はあるんです。

ですが、お話はお話、それを実物で探せるかっていうとカナダまでいってオタワにあるカナダ自然博物館まで足をのばすのとかしないとそうそう巡り合えません。そもそもカナダ以外の蛍石コレクターでNew Brunswickの蛍石があることを知っている人自体殆どいないでしょ、そういうもんです。

 

といわけでこれは著名なMelanson夫妻がカナダ自然博物館から1980年代に入手したもの。採集者もキュレーターだったLouis Moyd氏。そういうでどころじゃないと出回りませんよねやっぱり。

まぁ、青ければなおよかったんですけどねだとか、ヤオガンと見た目どこが違うのかとか、コーナーに劈開あるやんとかそういう野暮なことは言うもんではない。 本当のところは言いたい。

(2017/9/16)

 


St.Lawrence

Salt Cove, St. Lawrence, Burin Peninsula, Newfoundland, Canada

5cm wide

 

エレクトリックブルー!カナダ!しかもニューファンドランド島!!

蛍石コレクターとしてのテンションが爆上がりせざるを得ません。

そう、ニューファンドランド島はSt.Lawrenceといえば往時には世界一の蛍石産出量を誇った鉱山もある地なのです。

1933年に商業ベースの産出が始まり、のちにラドンによる肺がん鉱害発覚も契機として最後の蛍石鉱山が1977年に閉山するまでに40を超える蛍石の鉱脈が発見されています。具体名を挙げるとBlack Duck鉱山から始まり、Iron SpringsやDirector Mine、Tarefare鉱山などが有名どころでしょう。稼鉱当初には45㎝にも及ぶ色とりどりの蛍石が出たと言いますが、もはや70年、80年もの昔であり、第二次世界大戦を経たことや、都市部からの隔たれた地であったことなどから現存する標本は非常に少ないのです。私もこれまでに売り物としては片手で数えられるほどしか見てきませんでした。

というわけでこの標本。残念ながら往時のものではなく、近年になってカナダのコレクターが採取したもので、表面は赤鉄鉱にひどく覆われ、種々の理由からシリコンスプレー処理までなされていますが、それでもこの色ですよ。カナダですよ?Ullcoatsじゃないんですよ?

そして1時間半で日光下では淡い黄色に褪色します。儚いね。

ちなみにIorn Springs VeinsまたはTarefare veinのものと推測されます。

 

(2022/9/30)