イタリアの蛍石

 

イタリアの蛍石というとシチリア島やサルデーニャ島の蛍石、ロンバルディア州・zongoの蛍石、はたまたモンテビアンコ(モンブランのイタリア側)のピンク蛍石などがよく見る産地かもしれません。

 



Poggio Balate

Poggio Balate, Termini Imerese, Palermo Province, Sicily, Italy

Collected in early 2018

Small Cabinet Sized

 

イタリアはシチリア島の有名産地・Poggio Balateの蛍石。

透明度のあるダークシアンであり、純粋な青ではないように感じる。

18年初めに現地の地質学者が掘り当てたもので、Poggio Balateの中ではかなり良いクオリティ。イタリア人的には結構熱いものだったみたいで、手に入れるのにも一苦労所か二苦労。一つ言えるのは、イタリアの郵便事情はお世辞にも良いと言えないことかしら。

 

しかし、イリノイやヤオガンといったワールドクラスの青を産出する地でないことを鑑みると、確かに結構いい標本なんじゃないだろうか。

Green Fluorite from Sicily

Poggio Balate, Termini Imerese, Palermo Province, Sicily, Italy

30mm×23mm×18mm Largest = 15mm

 

イタリア・シチリア島の緑色の蛍石。

半透明でこの産地に典型的なシーグリーンな蛍石。サイズは小さくどうということもない標本ですが、色合いを見るサンプルとしては十分だろうか。

 

Poggio Balateの蛍石はハイドロカーボンを含有していているため、よく見ると結晶に液体が含有されている様が確認できたり、結晶を割ると独特のにおいがするのだとか。入手した際にシチリア人の陽気な鉱物商はそう言っていました。”匂い嗅いでみなよ。わってみ?”とも。

 

産地の読みはポッジョ・バラーテ(うろ覚え)で、シチリア人の店主自ら採掘したとのこと。その後も話し込んでいたらパ○コ抹茶味をくれたので、これの名前は抹茶パピ○。

Blue Fluorite from Sicily

Poggio Balate, Termini Imerese, Palermo Province, Sicily, Italy

36mm×30mm×25mm  Largest = 30mm

 

上の緑の標本と同時に入手したシチリア島・Poggio Balateの蛍石。

劈開などがあるため状態はグッドとは言えないですが、典型的ではない濃い青と黄色の組み合わせ。

 

わりと濃い青色で、初見ではイタリア産ではなくモロッコ産だろうかと推測してしまうような色合い。ですが、上の標本とほんの数メートルは離れたところから掘り出したとか。やるじゃない、シチリア。

 

ちなみに光を当ててみると、一層濃い青のファントムがあるのが確認できます。

やっぱりこれにも液体が入っている可能性があるようで、「割ってみてにおいを嗅いでみてもいいよ」と言われました。よっぽど試してほしかったのか。

 

しかし、これらを入手したイタリア人鉱物商も近年のミネラルショーで見かけなくなってしまいました。残念です。



Beura Quarries

Beura Quarries, Beura-Cardezza, Ossola Valley, Verbano-Cusio-Ossola Province, Piedmont, Italy

24mm×22mm×18mm

 

イタリアのピンク蛍石。

粒は2~3mmと小さいですけれど、確かにピンク色の八面体が緑色の苔むしたかのような母岩の上にいくつも付いています。

フランス・モンブランやスイスアルプスのピンクの蛍石とは比べるべくもありませんが、このアルプス山脈・イタリア側でもピンク蛍石が産出するんだよーというサンプルということで。

生憎とこの標本の場合は、モンテビアンコ(モンブランのイタリア側)で採れたものではないんですけれどね。ただ一応スイスとの国境付近のあたりでしょうか

 

また、割合と古い標本らしく、この付属しているラベルから、1980年~96年の間のどこかで有名ディーラーだった故Bill Schneider氏の店舗・Schneider's rock&mineralsで取り扱われていたことがわかります。

ただその後の持ち主の人がサムネイルボックスに入れるためにラベルの両端を切り落としてしまっているようで。


Baveno

 

Baveno, Verbano-Cusio-Ossola Province, Piedmont, Italy

2cm tall

Collected before 1920

 

この界隈、有名だけれども手に入らない標本が多すぎるのです。

バベノ式双晶の由来となっているバベノで産出した蛍石も、そういった類です。鮮やかな紫色の蛍石や、時にピンク色!の蛍石がバランスよく長石にのった標本。しかもイタリア産ですよ。バベノ式双晶由来の地の正長石にと一緒になった標本です。コレクターならどう考えても放っておけないじゃないですか。でも、滅多に手に入るものでもない。大体がとても古い標本ですから、ヨーロッパ内の博物館とか、コレクターのポケットから出てくることがまずないのでしょう。ますます欲しくなる。強欲の悪循環です。

 

そんなわけでして。御多分にもれず、入手に時間がかかりました。正長石、水晶の上に紫色の蛍石がのる古い標本です。フライブルグ工科大学の1940年~50年頃に作成されたラベルと、より古い1880年から1920年頃のラベルが付属していました。ですから100年以上昔のアンティーク標本です。

納得できるクオリティからは程遠いですが、蛍石標本と一応言い張れるレベルはクリアしています。そのレベルの標本ですらなかなか手に入らないんですよ。博物館に展示されてるレベルの標本、欲しいめぅ…

 

(2023/10/20)