Other locations from Germany


 ザクセン州や黒い森が群を抜いて知名度の高いドイツの蛍石産地ですが、それら以外にも鑑賞に耐え得る蛍石を産出する場所がいくらか存在しています。このページではそれらについて扱います。



Caaschwitz

Caaschwitz, Gera, Thüringen, Germany

25mm×21mm×10mm  Largest = 5mm

 

ドイツの蛍石を探していると、稀に見ることのある産地の蛍石。

青紫をした蛍石と母岩の白地によるコントラストは見る者を楽しませてくれます。

 

その色合いですが、青紫といっても中心が少々濃い紫で表面には斑点のように色のムラがありと、あたかも一部のイリノイ産蛍石(たとえばDenton鉱山のものとか)に似た印象を受けます。

勿論結晶のサイズはこちらがmm単位、イリノイはcm単位と異なりますけれど。

 

Caaschwitzでは数mm単位の紫色な蛍石がとれるようですが、10年以上前に砕石場は終了してしまっているとのこと。

この標本については前の持ち主のラベルに"Fluorit xx, Caaschwitz, BRD"と書かれていたため、BRD(ドイツ連邦共和国)という名が示す通り90年のドイツ再統一以前に採集された標本であることがわかります。

(4/24/2016 追記)


Seebach Cliff

Seebach Cliff, Friedrichroda, Thuringian Forest, Thuringia, Germany

Miniature size

Ex. TAK collection

 

煌めくヘマタイトで装飾された、柵状に伸びる赤くほんのり色づいた水晶。

それを母岩とし、結晶した青緑色のふんわりとした蛍石。黒赤とメルヘンシーグリーンのコントラストが素晴らしい。この産地としては充分どころか、驚くほどのレベルの高さらしい。ドイツ蛍石コレクターにとって。なんてことだ!

 

基本的には稀に見かける程度の、ドイツ蛍石マニア向けの産地。この産地の蛍石は大抵このような淡い緑色ですが、あまり大きい結晶を見かけません。恐らくは1980年代に一連の産出があったときのものでしょう。前のコレクターは2000年代前半に入手されたとのこと。

(2018/3/9 編)


St. Andreasberg

St Andreasberg, St Andreasberg District, Harz, Lower Saxony, Germany

Ex. Kay Robertson #4495

Collected c. 1865-1880

Miniature Sized

 

情報がなければ、ちょっと薄いミントグリーンの蛍石とUglyな方解石の母岩の標本。

でもこれコレクターにとってはとても意味のある標本なんです。

一つ目はKay Robertsonという御歳95を超えた有名なコレクターのコレクションだったということ。97歳の彼女のコレクション総数は13000あまり、その中のこのナンバーですから彼女が入手したのは恐らく半世紀以上は昔でしょう。

そしてそれ以上に価値があるのが、これがSt.Andreasbergの蛍石標本であるということです。St.Andreasbergは少なくとも15世紀から知られたドイツで最もクラシックで有名な銀産地の一つで、最終的には1910年にすべての鉱山が閉じるまで約400年の歴史があります。閉山して1世紀を経た今日でも、一級品の濃紅銀鉱や脆銀鉱など銀鉱物で有名な産地でもあり、蛍石や、ピンクな魚眼石がしられる産地でもあります。

そのSt.Andreasbergの蛍石なんです。この地の蛍石は基本的には稀産ですが、時に無色や黄色、薄緑いろの綺麗な蛍石が知られていて、MR誌で確認できる範囲内ではほとんどが薄緑色で八面体の蛍石。これもそれに合致しますよね。ドイツ人によれば恐らく1865年から1880年のSt.Andreasbergの最後のheydayに採集されたものではとのこと。どちらにせ100年以上まえのもの。ザ・クラシックというやつですね。

あ、3番目がありました。この近辺はかの有名なブロッケン山なんです。魔女の集会ができますよ(笑)

(2018/6/16)

Ref: Mineralogical record Vol.48 Num3


Rotteleberode

Flußschacht Mine, Rottleberode, Südharz, Mansfeld-Südharz, Saxony-Anhalt, Germany

5cm wide

 

ロットレーバーオーデもまたドイツの著名な蛍石産地の一つです。その中でもいくつか鉱山があるのですが、これはFlußschacht鉱山の標本です。

1990年に閉山するまでの間に、数多くの蛍石を世に送り出していますが、その多くは無色から淡い水色または緑色の結晶です。時にヘマタイトに由来した赤さを帯びることがあります。

 

蛍石コレクター界隈で最も凄いロットレーバーオーデの標本と認識されているであろう標本は、現在カリフォルニア州のコレクターが所持していますが、その標本までいくとアクアマリンかと思うような色、透明度。

この標本も決して悪いものではなく、むしろ良いレベルの標本とさえいえますが、あれと比較してしまうと色は薄いなぁと考えてしまいます。まぁなにはともあれ、こういった薄青~緑色の赤褐色とのコントラストが楽しめる産地です。

 

なお90年に閉山したとあるとおり、以前のコレクターのラベルはドイツ連邦共和国と記載されていました。

(2020/8/21)


Pfaffenberg Mine

Pfaffenberg Mine, Neudorf, Harzgerode mining district, Harz, Saxony-Anhalt, Germany

Miniature Sized

Ex. Gunter Ertle Collection

 

現代ではほぼ見ることのない蛍石。

ごく淡く緑に色づいた蛍石がチョコレート色の菱鉄鉱に散らばるもので、蛍石は最大で8mmとかそのぐらい。色のコントラストは比較的好み。

 

Pfaffenberg Mineを含めたNeudorfは方鉛鉱や車骨鉱で知られる産地で、その全盛期は19世紀前半でした。20世紀初頭には鉱山は閉山してしまい、いわゆる歴史的産地というものです。

この標本は単純な蛍石として考えると貧弱と言わざるを得ません。なおかつどの年代に採取されたものか不明です。しかしながら歴史的産地であるということに変わりはなく、なおかつ蛍石が比較的レアな地であることを勘案すると意義のある標本に早変わりするわけです。そういう玄人向けの標本。