スイスの蛍石

 

スイスはフランス以上にピンク色を呈する蛍石の産地として有名な国です。

数千メートル級の山々が連なるスイスアルプス。そこから産出する宝石にも匹敵しうるピンク蛍石は私たちコレクターの垂涎の的と言えるでしょう。

Zinggenstöcke, Tierberg, Planggenstockなどが代表的な産地としてあげられます。

勿論ピンク以外にも緑や紫、はては青い蛍石までも産出していますが市場で見かけることは稀かもしれません。

 

 


Göscheneralp

Göscheneralp, Göschenen Valley, Uri, Switzerland

20mm×20mm×18mm


著名なスイス・アルプスのピンク・フローライト。

ただピンクフローライトとしてすぐ思い浮かぶようなホットピンクやサーモンピンクといった色合いよりは、真朱のような茶色をかんだようなピンク色の標本。


表面はザラザラになっており一部には恐らく緑泥石のインクルがうかがえますが、端正な八面体でピンク系なのに全体として落ち着いた印象をうけます。


Göscheneralpはスイスアルプスのピンク蛍石の産地としてしられ、他の産地同様煙水晶や氷長石を伴って産出されます。

Göscheneralp, Göschenen Valley, Uri, Switzerland

Collected in Summer/2017

Thumbnail Sized

 

温かみのあると例えるんでしょうか、すこしオレンジみを感じるピンクフローライト。

Göscheneralpとしては色が濃く、結晶も2cmとかなり大きいほう。母岩もついているし、照りの良いセンターとサムネイルとしてかなり良いところ。

この産地の蛍石はエッチングによって結晶面がマットだったりするのが普通のところ、そういう意味でもレアなんです。上の標本はエッチング随分受けてそうですもんね。

これで煙水晶もついていてくれたら自分の好みとしては最高なんですけど、ついていないほうがシンプルに美しいのかな。自然による造形美は難しいところだ。

(2018/1/14)

Göscheneralp, Göschenen Valley, Uri, Switzerland

Collected in late 1990's

Miniature Sized

 

これもまたGöscheneralpの蛍石。ただ、上にのせた二つとはまた違ったタイプのもの。

どう違うというと、まず母岩が方解石であるという点。どういうわけか方解石母岩のものは結晶が小さい代わりに透明度が高い傾向があるよう。結晶の大きさは大体10mmには届かないものの、実際写真以上に透明だったり。それを踏まえると、確かに方解石母岩のピンク蛍石って見かけませんよね。

ちなみに1990年代の後半にドイツ人のコレクターによって採集された標本で、オーストリア人コレクターを経由して我が家に。

(2018/11/2)



Rufibach Cleft

Rufibach cleft, Zinggenstöcke, Oberaar lake area, Guttannen, Bern, Switzerland

3.6cm wide

Ex. Malte Sickinger coll.

 

何ともバランスのいい標本。としか、言いようがない。

Rufibach Cleftらしい蛍石のピンク、煙水晶、母岩の白が完璧に調和してしまっている。

 

1960年代から70年代にかけて、Ernst Rufibachの手で採取された標本。欧州の鉱物コレクターからは、間違いなく、古典的産地とか伝説的産地として扱われるもの。Rufibach Cleftらしいと書きましたが、ここの蛍石標本は、容易に識別できます。結晶表面の蝕像や、結晶形、そしてわずかに紫色が入ることなどが特徴です。

(2023/12/10)


Bächlistock

Bächlistock, Bächli Valley, Grimsel, Bern, Switzerland

Miniature Sized

 

一般に想像されるピンクフローライトとは趣がちがうけれども、ちゃんとした、そして恐らく比較的古いスイスアルプスの蛍石。

 

ブラウンシュガーのような氷長石との母岩には、透明度の良い蛍石が八面体に十二面体と六面体の面が現れつつステップを形成して存在を主張しています。

色合いは無色透明のようで、中心部にほんのりピンク色と結晶の稜線にちょこっと紫色。あからさまなピンクではない分、お淑やかと評価することもできなくはないでしょう。

 

産地の表記は購入時のままBächlistockとしましたが、あまりBächlistockでは蛍石がネット上ではヒットしません。ただ、ピンクをコアとして無色の八面体が成長する標本など、いくつか知られてはいます。一応ドイツ語ではネットでもヒットするようですし、何にせよ有名なグリムゼル・エリアの蛍石であることには間違いなく、古いものだということなら産地が英語圏ネットで調べられないのも仕方ないことかもしれません。

 

追記

ドイツ語ではBächlitalのtalの部分がValleyに相当します。 Bächlistockのstockとはドイツ語ではなくスイスドイツ語?とのことで、階層になっていることや切り株を指すとのことです。

(ドイツ語OKな方よりご指摘いただきました)

(2017/10/21 編)


Chobelwand-Dürrschrennen caves

Chobelwand-Dürrschrennen caves, Alpstein Massif, Appenzell Innerrhoden, Switzerland

5cm tall

 

スイスの蛍石といえばピンクですよね。

ですけれどもここに青い蛍石があるんですよね。青ですよ、スイスの青。

光源によってはグリーニッシュブルーからブルイッシュグリーンへ色味が変化はするものの、ニューメキシコの蛍石といっても区別の難しい蛍石がスイスにあるというのは、かなりの蛍石マニア以外にとって驚きをともなうものではないでしょうか。

 

この100年以上前から知られる洞窟は方解石とともに、緑や水色の蛍石を産したことで知られています。

現在では自然公園として整備されており、もちろん採集も禁止されています。ですから、基本的にはいずれもかなり古い標本で、売り物として見かけるよりは博物館の収蔵品として見かけることのほうが多いでしょう。

(2020/10/2)